社長ブログ
株式会社アイネット
皆さん、こんにちは!
企業経営をしているとこれまでの人生でもっとちゃんと学んでおけば良かったと思うジャンルが2つあります。一つは「歴史」です。もう一つは「経済」です。今回、この2つのジャンルが見事に融合した『日露戦争、資金調達の戦いー高橋是清とバンカーたち』という本を読みました。タイトルを一見すると戦争の話なのですが、内容は金融成分がかなり高めです。
話の中心人物の高橋是清は、日露戦争で戦費調達に奔走したのち、大蔵大臣に就任、その後は総理まで務めたにも関わらず再び格下の大蔵大臣に返り咲き昭和の金融恐慌を納め、最後には国賊として暗殺されてしまったという人です。英語に堪能で、写真を見るとでっぷりとした体格で、さぞかし海外の投資家たちとはエネルギッシュにやりあったのではないかと想像されます。
高橋是清が何とか日露戦争の資金調達をやり切り日本を裏で支えた背景にはアメリカのヤコブ・シフとの強い関係があったからで、このヤコブ・シフという人物が金融界においていかほどの力を持ち、日露戦争において金融面で弱かった日本側についたのか、などを歴史をたどりながらさまざまな金融データを織り交ぜながら解説してくれています。
などと書くと、なんとなくお堅い印象ですよね。特に私は金融に暗いので、データなどは見てもチンプンカンプン。にも関わらず、歴史と金融、そして当時の関係者の日記を引用した本書がなぜこんなにも面白く読めたのか。
それは、新型コロナウィルスによる不安が世界全土を覆うなか、いままさに戦争とも似たような状況下にあるからだと思います。先が見えない中、どうやってそれぞれの国は経済を回していくのか。国民の不安をどう鎮めるのか。この先の収束を見据えて国は企業はなにに投資していくのか。メディアに踊らされず冷静に状況判断するということはどういうことなのか。
さまざまな選択を経営者としても迫られています。
そんなとき、本書で日露戦争という一年半ほどの出来事を俯瞰して見るのは、ものすごく勉強になります。
さらには戦争の勝敗というのは誰がどう決めるのか。ということについて目からうろこでした。戦争に勝った・負けた、というのは、私自身は人が何人死に建物がどれだけ壊れどれだけの領土を支配されてしまったか、というようなことで圧倒したほうが相手に「降参です!」と言わせて終わる、という印象しか持っていませんでした。でも、実際には先を見通してお金をどれだけ用意しておくか。そしてそのお金は、その戦争を「ショー」として、あるいは「儲けしろ」としている各国のギャラリーの感情次第でどちらに流れていくかが決まっていく。
そもそも、ヤコブ・シフという銀行家がなぜ高橋是清についたのか。そこにはまず最初にユダヤ系でありユダヤ社会に強い絆を感じていたヤコブ・シフにとってユダヤ人を迫害していたロシアへの反発というのが強烈に働いたからなんですね。その後も、日露戦争に関与していく各国金融家はさまざまな理由でロシアに肩入れしたり日本に肩入れしたりするわけです。
そして戦争を見守るギャラリーにとっては、この日露戦争は、白色人種対有色人種、キリスト今日対非キリスト今日、先制君主国家対立憲君主国家、大国対小国、反ユダヤ主義対ユダヤ資本、帝国主義国家対植民地など、さまざまな対立軸でのコンテンツとしての魅力にあふれていたんです。それが「戦争」というものなのか。と、学生時代には社会の教科書でぼんやりとしか分かっていなかったことが改めてくっきりと理解できました。
高橋是清のすごいのは、ヤコブ・シフと会っただけで満足せず、フランス首相やロスチャイルド、ベアリング商会、カッセル卿、などロンドンを中心としたバンクをすべて押さえていったその手腕なわけです。
さて私はいま、このような本を読みつつ、「経営というのは5年、10年というスパンで浮き沈みを吸収できる体質を作らないといけない」ということを肝に銘じながら会社の運営を考えています。どうすれば高橋是清のように、ダイナミックでかつバランス感覚のある企業財務の動かし方ができるだろうかと日々頭を絞る毎日です。