社長ブログ

株式会社アイネット

みなさん、こんにちは!


最近の私は、部下の人のアンガーマネジメントについて自分でも何かできないかなあと思って勉強しているところです。


最近読んだのは『怒りの哲学 ー正しい「怒り」は存在するかー』なので、ちょっとこの本について紹介していきたいと思います。まず読み始めてすぐに気づいたのはこの本は私が想像していた「自身のメンタルのコントロール」についての本とは異なっているということでした。

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この本の構成は少し変わっていて、アグネス・カラードという哲学者の人が怒りについての持論を問題提起として挙げ、それに対して9人の哲学者が応答する形で文章を出し、更にアグネス・カラードがそれに応える文章を出しており、文章形式の非常に深い対話がなされています。


なので、読むのにはかなり時間がかかってしまいました。


通常、アンガーマネジメントなどで取り上げられる「怒り」は、怒りからくる衝動的な言動から本人が周囲との人間関係や社会生活を破壊してしまうこともあるような、そんな「怒り」のことです。


が、この本で取り上げられている「怒り」はもっとその人の属性における歴史的背景などからくるものが中心です。この本の著者であり問題提起者のアグネス・カラードはユダヤ人として生まれ、移民としてアメリカに渡り、祖母は強制収容の生き残りであったということを知れば、その理由はすぐに理解できます。なので、本の全般を通して、ホロコースト、奴隷、ヘイト、ジェンダー、など一筋縄ではいかないさまざまな言葉が出てきて、議論は非常に深いものになります。

 

「怒り」というと、現代社会ではむき出しで表現するのは忌み嫌われる感情として扱われて、いかに「怒り」を自分の中でうまく処理して消していくかは一種の処世術とすら考えられていますが、カラードの最初の問題提起ではこう書いています。


「怒りを強引に押しつぶしてしまうと、自尊心を失い、さらには道徳的な基盤を失ってしまう。本物の不正行為を目の当たりにしながら怒りを抑えることは悪を黙認することになる。それゆえ私たちは与えられた状況下で自分自身にどれだけの怒りを許すかという複雑な問題に直面する」


と。


「怒り」は、周囲との関係を破壊してしまう「浅い衝動的な行為に繋がる怒り」もありますが、「人種やジェンダー由来の消えることない静かに燃え盛る怒り」もあり、この本は主に後者の怒りについて書かれているのです。


今の社会では往々にして前者の怒りに注力してしまい、自身の道徳や尊厳を守る怒りについてはあまり語られていないのではないでしょうか。


いずれにしても自分の中の怒りの感情を感じた時に、その由来について判断し、外からの刺激への反射行動としての怒りなのか、自分の正義を守りたいための怒りなのかを選り分け、適切に処理できるための感情管理をすべきだと思っています。義憤も暴走すれば恐ろしいですからね。


あともう一冊。


15年ぐらい前に出た有名な本ですが、スリランカのお坊さんであるアルボムッレ・スマサナーラさんのご著書『怒らないこと』も挙げておきます。私が最初に自分のメンタルのコントロールの必要を感じた時に読んだ本ですが、これは「衝動的な浅い怒り」に対して、どう対処すればいいかが書かれています。

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冒頭ですがこう書かれています。


「私はよく「怒りたくないのに怒ってしまうのです」といった相談を受けるのです。
応えは明白です。簡単で、完全な方法をお教えします。
それは「怒らないこと」です。」

 

これには割と衝撃を受けました。怒りは自分のチカラではどうしようもないものではなくコントロール可能であることがここに書かれています。アドラー心理学で、「母親が先生と電話で話しているときはにこやかなのに電話口をふさいで子供を叱り、また電話に戻るとにこやかにしゃべる。つまり怒りは出し入れできる」みたいなことを読みましたが、これも同じことと思います。


15年も前にこの本を読んだのに、未だに器の小さい私ですがちょっとずつでも自分をコントロールできるようになりたいものです。